「甘い生活」フェデリコ・フェリーニの感想。1960年の映画。

ネタバレしています。内容メモは映画内容の備忘録です。
【感想】:華やかで空虚な生活は恐ろしい。
【考察】:主人公のマルチェロは色々なところに行ける。最新の芸能の世界、知的な文学者の集い、昔なじみのバー、悲惨な事件の現場。真剣に好きになってくれる女もいる。しかし、それらの全てが空虚な絵空事。各所の場面で様々な人物が登場するがすぐに消えていく。

アメリカから来た新進のグラマーな女優:シルヴィリアはいつも楽しそうだが二人きりになったときに言う「全てが上手くいかない」
貴族の美人:マッダレーナは「私は自分で決断したことがない」と嘆く。
知的な友人:スタイナーは「平和が怖い、見かけは平和でも裏に地獄があるようで…」と言って子供を殺して自殺する。
みな、安定した社会に支えられ生活しながらも…それは自分の力で勝ち得たものでないと知っていてどうする事もできていない。みな、意味を見いだせていない。
彼女と別れ、スタイナーの自殺の後、マルチェロはひたすら乱痴気騒ぎに興じる。めちゃくちゃに遊び、盛り上がる為には他人を傷つけたりもする。
物凄く、恐ろしい。虚無主義が恐ろしい。
伝統あるローマの邸宅も、実質が伴っていなければネズミや虫の巣になってしまう。
新進のファッション、芸能、知性、伝統的な美…どれも虚無に食い荒らされている。
じゃあ、虚無はどうやってかわせば良いのだろうか?生活を一つずつ積み上げるってことか?
ときどき、自然の音や自然自体によって周囲が頭を冷やしはしゃぎまわるのを止める描写がある。
登場人物はみな…虚無をはしゃぐ事でごまかしていた。一度、自分の中の虚無と向き合う事が必要なのではないか。
【結論】:虚無主義に蝕まれないように、はしゃいで自分の虚無をごまかすのはやめよう。(だいぶ昔から向かっているけど)虚無に向かい合おう。
【内容メモ】
ヘリで運ばれるイエスの像、それに手を振るマンションの屋上で日焼けしているビキニの娘たち。ヘリは華やかな街を通り抜けていく。レストランでは公爵の醜聞を追う記者が女をナンパしていた。華やかな町:ローマの華やかな生活を写している。
記者と女が、知らない女を拾い自宅まで送ってやる。拾った女は売春婦の様だ。そして、彼女はコーヒーを売春婦にねだる。売春婦の家は修理不全で水浸し。寝室に通されて彼女は記者を誘う。売春婦は空気を読んで外で待機。
女がどこかの部屋でふらついている。この女はエンマというらしい。記者が部屋に帰ってきてエンマを病院へ運ぶ。エンマは毒を飲んだらしい。
空港からシルヴィリアという女をたくさんの記者が迎える。アメリカの女優らしい。ピザで出迎える製作陣。場所を移して質問攻めにする記者陣。そのころ、記者:マルチェロは電話で痴話喧嘩していた。エンマは不安定そうだ。夜には帰ると約束する。
シルヴィアはローマの遺跡にはしゃいでいた。それを追う記者陣。追い付いたのはマルチェロだけ。その夜に早速、シルヴィアをナンパするマルチェロ。歌と踊りを楽しむシルヴィアを後にして席につき、ロビーという男と同席する。ロビーはシルヴィアと親交が有ったようだが彼女を侮辱する。怒ったシルヴィアをマルチェロが車で送る。二人きりになったときシルヴィアは嘆く「何もかも上手くいかない」と。帰りたくないというシルヴィアのため、マルチェロは女を頼ることにした。途中、野良猫を拾い牛乳を用意してくれと言い出すシルヴィア。買いに行ったら勝手に町を歩きだし、噴水で遊びだす。何か追い付く。そして、明け方にシルヴィアをホテルまで送ったらロビーがシルヴィアを叩き、マルチェロも叩く。
昼に、教会でスタイナーと会うマルチェロ。記事をほめてくれるスタイナー。オルガンで音楽を奏でる。
エンマとパパラッツォと共に車で移動。何かの事件のようだ。子供が聖母が現れた話し騒ぎになっている。子供は抑留されているようだ。見映えの良いようにポーズを演出する新聞社。すみで病気の回復を真剣に祈る母親。夜になり、信仰者、野次馬、記者。エンマは祈る。マルチェロが自分をずっと愛してくれたらと。そして、子供が解放され騒ぎになる。雨の中で祈る子供と、それにすがる病人。そして、子供が聖母のここに教会を立てよという命令を伝える。大騒ぎになりエンマを探し出すマルチェロ。そんな様子も写真に撮っているパパラッツォ。騒ぎでもみくちゃにされ子供がしんでしまう。
スタイナーの家に招かれるマルチェロとエンマ。芸術家の集まりの様だ。スタイナーは文学と報道が好きなようだ。イリスは言う「今を懸命に生きるのが大事」「3つの現実逃避、タバコ、酒、ベッド」。スタイナーが録音した自然音に興味を示すエンマ。それを流してみるとみな聞き入っている。子供が入ってきてその愛らしさにみなが微笑む。こんな家庭を持ちたいとマルチェロに寄ってくるエマ。無言で離れるマルチェロ。スタイナーへマルチェロは今の日常を変えたいと告白する。スタイナーも自分自信の未熟さを苦々しく告白する。自由に書け、ファシストよりの新聞で書くよりはその方が良いだろうとマルチェロに忠言。
「時々夜になると暗さと静けさがつらい。平和が恐ろしい、何よりも平和が怖い、見かけは平和でも裏に地獄があるようで…子供の未来を考える。未来は明るいというが、見方によっては電話1本ですべてが終わるかも。情熱や感情を超えた所で芸術の調和に生きるべきだ。魅惑の秩序の中に…互いに愛し合い時間の外で生きるべきだ。超然と」という
しつこい電話にうんざりするマルチェロ。記事を打ちながら、美人のウェイトレス:パオラと話をする。
夜、マルチェロは父と会う。母からの手紙を受けとる。自宅の電話の女性は家政婦だと誤魔化す。父をナイトクラブに誘う。ナイトクラブで踊り子を交えて酒と会話を楽しむ。悲しげなトランペットの音を聞き入る一同。冗長とした話が続く。踊り子とワルツを踊る父。何か踊り子と仲良くなっている父。そして、帰宅。父と別れて踊り子たちを送る。帰ってみると父の様子がおかしいと踊り子が訴える。父と二人で話をする事に。父はam5:30の列車に乗ろうとするが止める。どうしても帰宅したいという父。そして父は帰る。
カフェで男同士が喧嘩しているなかへマルチェロ出現。何かモデルの女といっしょにどこかへいく。途中、貴族っぽい男に車に乗せてもらいどこかへ行く。何だか貴族っぽいパーティーに参加する。暗い一室にマッダレーナにつれられ真面目な話を持ちかけられる。結婚したいと。貞節な妻になりたいと。マルチェロも今夜は愛していると。マッダレーナは「自分では何も選んでこなかった」と嘆く。そして、途中にやってきた男と情事に入っていく。古い家を探検していく遊びがはじまる。由緒ある屋敷だがネズミが巣食っている。遊びでやっていた心霊術で女が一人錯乱する。そして、朝、みんな頭が冷えて家を後にする。
どっかの夜道、エンマに愛情を見せてくれないと怒られるマルチェロ。怒りのあまり、出会わなければ良かったと怒鳴ってしまうマルチェロ。マルチェロは自由に生きたい、束縛されのはごめんだと怒り、エンマと別れる。車でさっていくがまたもどってくる。家で一眠りするとどこかから電話が
子供二人を殺したあと、スタイナーは自殺した。警察に事情を聞かれる。まだ何も知らない婦人を警察といっしょに迎える事に。不幸の知らせを聞いてもその写真を撮ろうとする新聞記者。
夜中、どこかの金持ちの家を訪れるお調子者の連中。パーティーが勝手に開かれる。マルチェロは広告業をスタートした。お調子者連中の仲間になったようだ。家の主が帰ってきて出ていけと言ったが、マルチェロは何かに苛立ち悪ふざけをやめない。悪ふざけで人を傷つけるが何も生まない。
朝、静かな林を歩み浜辺へ向かう。地引き網に巨大なエイが捕まっていた。エイはこちら側をじっと見つめている。いつかの浜辺の女の子:パオラと再開する彼女は優しく微笑むが何を言っているか分からない。しかたなく別れる。